朝日新聞連載小説『門』夏目漱石第103回2016/3/2

 坂井の菓子と蛙についての話は、印象に残る。
 夫婦が長年連れ添っているだけで、それはめでたいことだ。平凡にただ生きていることは幸福なことだ。坂井の話からは、こういうことが思い浮かぶ。
 不安に押しつぶされそうになり、救いを求めて禅寺へ行ったが、救いは得られなかった宗助に、坂井の家でのこの話は、何かを与えるものであったと感じる。