朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第329回2016/3/4

 庭に呼び入れたのは、戦いの場というよりは、翔吾に気持ちを吐き出させるためのものだったのか。
 佐瀬がその口火を切ったのは、いかにも彼らしい。佐瀬は、人に優しくネコにも野菜にも優しい。そして、相手の心の中に入って行ける人なのだろう。

 翔吾のことが明らかになって来た。ジャッジへの不満からは、広岡が感じたように律義な性格が浮かび上がる。また、彼には、信頼できる指導者がいないのだろう。


 藤原、佐瀬、星、そして広岡の四人にそれぞれの性格が作者によって付与されている。だが、だんだんに一人の人間を描いているように感じて来た。その理由は、自分でもまだよく分からない。