朝日新聞連載小説『門』夏目漱石第104回2016/3/3

 『門』を読むことができてよかった。

 過去に読んだかどうか曖昧だったが、初めてだった。
 坂井の口から安井の事が出てからは、連載を待ち切れず最後まで読んでしまった。その後も、連載は毎回読み続けた。最終回を読んで、改めて『門』を読み終えた感じを味わっている。

 幸福にあふれている結末だ。

 私自身の指針となる結末だ。


御米は障子の硝子に映る麗かな日影をすかして見て、
「本当にありがたいわね。漸くの事春になって」といって、晴れ晴れしい眉を張った。宗助は縁に出て長く延びた爪を剪りながら、
「うん、しかしまたじきに冬になるよ」と答えて、下を向いたまま鋏を動かしていた。


 「冬」になっても、宗助と御米は今までに変わらず日々を積み重ねると受け取った。