働くことに喜びも生きがいも見い出せない。労働は、賃金を得ることが第一義だ。そして、賃金を得なければ生きていけない。どんなにいやでも食うために働き、俸給をもらわねばならない。

 夏目漱石は、近代以降の俸給生活者、サラリーマンの姿を描いている。
 食うために職に就いて毎日勤めに出るのだから、サラリーマンの楽しみは勤めから家に帰る時と、休日だけになる。次の休日の幸福のために、毎日苦しくとも我慢して勤めに出る。混み合う電車で。

 このような見方をしない、あるいはしてはいけないという小説はたくさんある。仕事に意義を感じ、働けることが幸福だという小説の主人公も多い。
 それが、幻想だからこそ、何遍でも描かれるのだろうか。
 現実の世の中は、様々な人々がいる。全てのサラリーマンが、「宗助」のようだとは言わない。
 しかし、俸給を得て労働することの本質と実態は、『門』で、作者が描いているものだと感じる。