朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第353回2016/3/28

 前回で広岡は、星が言ったことに納得して同意した。

「自分たちに、誰かを教えるなんていうことができるんだろうか‥‥」
 広岡が独り言のようにつぶやくと、星が言った。
「仁、おまえはもう教えているよ」
「‥‥‥‥?」

 広岡自身が気づいていなかったことを、星が見抜いていた。
 星のことがだんだんに明らかになってきた。サーフィン、ボクシング、サーフィン、妻に養ってもらう、そして、共同生活、星の人生についてもっと知りたい。

 ボクシングを教えるとなると、それはチャンプの家がどういう方向に進むかにつながる。その場合に、女性二人、佳菜子と令子が、かかわってくる気がする。