朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第370回2016/4/15

少なくとも広岡は、一週間が翔吾とのトレーニングのある土曜と日曜を中心に回っているような気さえするようになった。

 こういう感覚が好きだ。一日なり一週間なりが、何かを中心にして回っている。その何かが、今の広岡にはある。
 トレーニングだけでなく、週に何回かは夕食を作っているし、日曜にはカレーを作る。

 共同生活では、このように誰かのために何かをするということができるのだ。

 前回三人が残ったので、佐瀬中心のトレーニングに何かを加えるような話をするかと予想したが外れた。
 今回は四人そろっての散歩だ。四人で翔吾のこれからのことを話すか?それとも思いがけない誰かと会うか?