朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第393回2016/5/9

 藤原、佐瀬に比べると、星の過去が詳しく描かれている。作者は、星のような来歴をもつ登場人物に思い入れが強そうだ。

 星は、亡くなった妻と小料理屋をやっているときに料理の腕を上げたのであろうが、元々センスもよかったような気がする。

 今の社会では、老いていけばいくほど独り暮らしになる可能性が増す。そういう場合の食は、星が言っている通りだと思う。独り暮らしの男で料理ができれば、他の独り暮らしの人と食だけでも共同にするという手があるのかもしれない。シェアハウスのように、食事をシェアするシステムができれば、作るほうも、作ってもらう方も助かるはずだ。

 佐瀬と藤原の技術を、翔吾はたちまち習得したのだろうか。そうだとすると、話はどんどん進みそうだ。