朝日新聞連載小説『吾輩は猫である』夏目漱石第28回2016/5/17

 教師とその門下生、教師とその友人の学者、三人が三人とも、嘘とその嘘を見破っているようないないような会話が続く。そして、当人たちはどうも自分が一等賢いと思っているようだ。
 「吾輩」は、そんな教養人たちを冷ややかに見つめている。
 これだけ、「吾輩」の視点がはっきりとしてくると、「吾輩」が人間を観察している態度を、表現通りに冷笑しているだけとは受け取れなくなる。嘲笑、冷笑の土台には、人間に対する強い好奇心が働いていそうだ。