朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第402回2016/5/19

 大塚に怪我も精神的なダメージもなさそうでよかったと思う。

 大塚と翔吾のスパーリングが注目されていたことが改めて分かった。会長の令子、トレーナーの郡司、何人もの真拳ジムの練習生、そして広岡と藤原と星、佐瀬はセコンドとして付いているようだ。
 こんなに注目されているスパーリングで、相手をノックアウトさせるようなダメージを与えなくてよかった。


「(略)もし先代の会長が君のボクシングを見たら喜んだと思う。(略)」

 大塚という選手は、本物なのだ。
 広岡は、このスパーリングでの翔吾のボクシングを喜んでいるようには感じられない。