朝日新聞連載小説『吾輩は猫である』夏目漱石第35回2016/5/26

人間というものは時間を潰すために強いて口を運動させて、可笑しくもない事を笑ったり、面白くもない事を嬉しがったりする外に能のない者だと思った。

 ここまでは、「吾輩」の人間全般に対する批評だ。この後に、「主人」苦紗弥と迷亭、寒月への批評が続く。その内容は次のようなものだ。
 苦紗弥は、表面では世の中のことに超然としているように見える。だが、彼にも欲があり、、迷亭や寒月に競争心をもっている。
 苦紗弥も迷亭も寒月も中身は俗物だ。だが、その言語動作が、世間一般の物知りぶる人々と違って、型にはまったものでない所が救いになっている。
 このような「吾輩」の批評を読むと、この三人、特に苦紗弥という人物に関心が湧き、親近感を感じてくる。
 以前にこの小説を読んだときは、この三人に共感したことなどなかったのに不思議だ。