朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第415回2016/5/31

 翔吾の父親が、翔吾のジム移籍をすんなりと許し、それだけでなく頭まで下げたのを読んだときは、なんだか拍子抜けした気分だった。ストーリーを進める上であっさりと創ったのかと思っていた。翔吾の父と広岡の関係は予想できなかった。だが、これで、納得がいく。
 この二人のボクサーがどんな試合をしたか、対戦した後の二人が互いのことをどう思っていたか、想像がつく。

 小説がここまで進んだのに、主人公について読者のまだ知らなかったことが次々に明かされて、驚かされる。

 広岡とはなんとクレバーな男なんだ!