朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第416回2016/6/1

 前回では、翔吾の父と広岡は接戦の激しい戦いをしたのだろうと思った。それは、まちがっていた。
 翔吾の父の戦績を聞くと、翔吾の父は抜きんでたボクサーではなかった。だが、ボクサーをやめてからに、興味深いことがありそうだ。

 ここまでは、広岡も他の三人も、翔吾の戦いぶりと勝利をどう感じているかが一切描かれていない。特に藤原は、自分が教えたパンチで翔吾が劇的なノックアウト勝利をしたのだから喜ぶはずだが、さてどうだろうか‥‥