朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第417回2016/6/2

 予想がまた外れた。
 前回を読んで、翔吾の父は、ボクサーをやめてから苦労して財を築き、念願のボクシングジムを開いたのだろうと勝手に予想した。しかし、翔吾の父は、成り行きに任せて婿養子に入り、強く望んだわけでもなく、ボクシングジムをもつようになったようだ。
 ただ、翔吾の父が幸運というだけではなく、それぞれの場面で能力を発揮したから今日があると思う。そこは詳しくは説明されていない。

 またまた予想してしまう。
 翔吾の父は、広岡のことを単なる対戦相手として覚えていたのではなかった、と。それに、翔吾は、広岡と父との過去を何か知ったのかもしれない。