朝日新聞連載小説『吾輩は猫である』夏目漱石第41回2016/6/3

 迷亭の相手を煙にまく会話術も、現実的に物事を受け取る細君には通用しないようだ。教師や学者が日常の生活で、他者の目にはどう映っているかが分かる。
 書籍の大切さを理解できない人々がいるから困る、といった考え方を説いているのではない。また、自分たちの高尚さをひけらかしてもいない。それどころか、現実的な生活を大切にする一般の人々から見れば、学問や文芸を尊ぶ人がいかに困った存在であるかが描かれていると思う。
 この小説は、ユーモアに包まれてはいるが、思想の目指すところと現実の生活がなかなか相容れないものであることを示していると思う。