朝日新聞連載小説『吾輩は猫である』夏目漱石第42回2016/6/7

 苦紗弥、迷亭、寒月の会話が、演説練習に伴って続く。
 この場面では、「吾輩」の批評が少ない。不思議なもので、「吾輩」からの批評が少なくなると、この三人の会話への興味が減ってしまう。

主人は無言のまま吾輩の頭を撫でる。この時のみは非常に丁寧な撫で方であった。

 このような猫からの観察がもしなければ、この会話も違ったものに感じるだろう。いかに会話の内容がおもしろそうでも、読者の興味を持続させることはできないように思う。