朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第424回2016/6/9

 霊感があるというのとも違う。超能力、予知能力があるというのとも違う。
 今までは、感覚がきわめて繊細なのだろうと思っていた。
 でも、里見八犬伝が持ち出されて、ただ五感が細やかで鋭いだけではないと感じる。言葉に対して独特の感受性をもっているし、空想力が豊かだ。佳菜子という人は。
 広岡もそういうところがある。

 佳菜子は、自分を六番目の珠を持つ犬士になぞらえようというのか?