朝日新聞連載小説『吾輩は猫である』夏目漱石第43回2016/6/8

 寒月の話の内容は、真面目なものなのか、それとも迷亭の話のように最初から聞く人を欺こうとするのもなのか、判然としない。
 方程式が出てくる「演説の首脳」の部分は、まったくのでたらめとも思えない。
 しかし、読者としては、苦紗弥、迷亭と同様に正しいともでたらめとも判別はできない。もしも、寒月の話す方程式がその当時の定理を踏まえたものだとしても、力学の説明としてこの例を出すことがふさわしいのであろうか。
 苦紗弥と迷亭の二人が、ギリシャ語も方程式も理解しないで、注文ばかりつけていることは、はっきりとしている。

 なんだか明治時代の小説の中のこれらの人物に同化してしまいそうだ。