朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第回2016/6/18

 前回を読んで、令子の話が父の残した家についてのものだと思った。まったく違った。
 令子からの電話の時には、佳菜子についてのことではないかと思った。それも違っていた。真拳ジムでは話しづらいことと電話では言っていたので、てっきりチャンプの家の誰かに関わることだと思ったら、大塚のことだったとは!
 大塚と翔吾の関係については、確か以前に触れられていると思う。星が、翔吾の体格から大塚と階級が重なることを見越していたと思う。
 また、スパーリングの際に大塚を倒した翔吾のアッパーパンチを、藤原と広岡が止ようと叫んだ。それがここにつながってきた。

 伏線ともいうべき筋立てが地下水脈のようになり、それが思いがけぬ場所で湧き出してくる。

 次のこともどこかで、つながり合うのだろうか?
○令子の話に出てきた真田の残した家。
○翔吾の父と話しながら広岡が感じていたこと。「――これが翔吾を不幸にすることにはならないだろうか‥‥。」
○チャンプの家のことが報道された影響。
○星が自分のパンチをまだ教えていないこと。
○ますます重要な登場人物となった佳菜子の謎につつまれたままの来歴。


 広岡は大塚のボクサーとしての能力を認めていたが、肝心の黒木翔吾のことは本心では認めていないのではないかと思っていた。しかし、この二人の能力について広岡のとらえ方がはっきりと表現された。

(略)異なる団体の世界チャンピオンの座に、二人同時に就かせることも夢ではない有望な選手なのだ。