朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第434回2016/6/20

 翔吾が、大塚とは戦わないとあっさりとは言わないだろう。

 山越との戦いでは、翔吾は圧倒的に優勢だった。しかし、山越のラッキーパンチとその後の強引な攻めの前に、危機を迎えた。
 大塚とのスパーリングでは、翔吾がスタミナでもパンチ力でも優位に立てるところはなかった。
 もしも、藤原のインサイドアッパーがなければ、大塚に負けていただろうし、山越にも勝てたかどうかわからないと思う。

「危険だぞ」
 
 星は、大塚と戦うことを止めろとは言っていない。
 そして、広岡はまだ何も言っていない。


 「来訪者」は、令子のことなのか?他にもいるのか?