朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第435回2016/6/21

 藤原と星の考えは筋が通っている。立場は逆だが、佐瀬の意見もわかる。広岡は、迷っていたようだ。そして、広岡も腹を決めたようだ。
 
 翔吾と大塚の試合ということになると、四人は、翔吾の側に立つことになる。それは、二人のボクサーの対決だけでなく、トレナーとセコンド同士の対決にもなっていくのであろう。

 勝負ということを理屈で理解するのはそれほどやっかいなことではない。だが、一人のチャンピオンを生み出すためには、多くの敗者が必要とされることを理解し、感じ取るのは難しい。
 ボクシングだけではなくて、あらゆる分野で、勝者のことはたびたび描かれ、スポットも当たる。だが、敗者の気持ちと考えを描いているものは多くはない。