朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第436回2016/6/22

「この数ヵ月で、翔吾を大塚に勝てるボクサーにすることはできない相談だろうか」

 翔吾と大塚の二人が、それぞれの意志で試合をしたいのは理解できる。
 だが、その二人をサポートする側はどうなるのか。翔吾を広岡たち四人がサポートし、大塚には郡司トレナーがつくことになるのだろう。そうなると、会長の令子の立場はどうなるのか。また、試合後の真拳ジムの中はどうなるのか。
 例えば、翔吾が勝ち、広岡たち四人がその後も支え続けて、世界チャンピオンにまでなったとする。広岡たちは、それで真田の夢を実現できたといえるのだろうか。私には、どうもそうは思えない。
 翔吾が大塚に勝ち、真拳ジムの所属のままで世界チャンピオンにまでなるというストーリーはないような気がする。


 広岡が、佐瀬の家を探したときに、近所の人に借金取りと間違われた。佐瀬がおびえる相手は、借金取りか、それとも身内の人か?