朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第452回2016/7/8

 広岡の決断は相変わらず早い。
 翼ジムの丸岡会長の言うことは信用できるのか?
 黒木が敗れた場合は?
 大塚が敗れた場合の真拳ジムは?
 そういうことを考えだしたらきりがなかっただろう。それよりは、チャンスを生かす方を選んだ。
 
 いよいよ星のボディフックが出てきた。
 佐瀬の三段打ちジャブは決定打にもなるが、本来は決定的なパンチの前段の技術だ。藤原のアッパーは相手をノックアウトできるパンチだが、本来はピンチになった場合の捨て身の戦術だ。
 星のボディフックは、この二つとは違う戦法、技術だろう。

 もう一度先の日程を復習しておこう。
○ 現在は、十二月の半ば過ぎ
○ 第一の試合 一月下旬 
 大塚 対 黒木(勝者は東洋太平洋チャンピオンとなり世界選手権の挑戦権が与えられる)
 チャンピオン ディアス 対 挑戦者 (勝者がスーパーライト級世界チャンピオン)
○ 第二の試合 四月初旬 
 黒木or大塚 対 スーパーライト級のチャンピオン(勝者がスーパーライト級世界チャンピオン)