朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第463回2016/7/20

 たちまち試合の前日になってしまった。
 スパーリングは、接近戦のままだったのか?
 広岡は、翔吾と中西へのアドバイスをしなかったのか?


 膝をたたくと、膝の上に乗る。薬をつけるときに我慢をさせる。こういうことは、犬はやるが猫はやらないと思っていた。
 猫と暮らすのも四匹めとなった。今の猫は五歳を超えた。そうすると、こういう猫の行為が珍しいものでなくなる。猫は、一緒に生活している人に対してこのくらいのことはする。
 それにしても、佳菜子の力は相変わらずのようだ。そして、チャンプの家の住人は佳菜子の力を受け入れているだけで、利用しようとはしない。だからこそ、彼女の力が発揮されているのだ。
 試合の結果を、前のように言い当てはしないだろうが、佳菜子の予知する力はなにかの形で出てくるだろう。