朝日新聞連載小説『吾輩は猫である』夏目漱石第49回2016/6/17

 金田夫人の用向きがはっきりした。
 娘の結婚相手は親が決める。そのためには、どんな方法でもよいから結婚相手の候補になる人物のことを調べ上げる。調べる内容は、寒月の場合のように学者であれば、博士になれるかどうかをなによりも重要視する。なぜ博士がよいかというと、世間体がよく収入もあるからだ。
 苦紗弥と迷亭は、そんな金田夫人のことを快く思ってはいないが、とにかく話の調子を合わせ、なんとか自分たちの話題に引き込もうとするが、それは成功しない。
 苦紗弥は、うわべだけで博士をありがたがることの愚かしさを示そうとするが、金田夫人の方は一向に自分の愚かしさに気づかない。
 
 博士という肩書が大切なのではなく、その人の研究の内容が大切だという当たり前のことが、なかなか通用しない。そんな世間の実態が金田夫人を通して描かれている。