朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第471回2016/7/28

 翔吾の、世界戦を前にして、広岡が倒れる。広岡の病状が知られる。
 チャンプの家のみんなは落胆し、翔吾は、戦意を失う。
 しかし、そのままで終わることはなかった。

 こんなストーリーを描く。


 大塚戦の前には、次のようなストーリーを描いた。

 翔吾は、この試合で眼を痛めて、その再発の恐れがあるので、ボクシングを続けることを医師から止められる。
 一時は、落胆する翔吾だが、佳菜子の看病と慰めによって立ち直る。
 佳菜子は、映画作りの勉強のために、広岡が手配してくれたアメリカへと旅立つ。
 翔吾もまたボクシング以外の生きがいを求めて、アメリカへ渡り、広岡のホテルでホテルマンとしての修行を始める。
 大塚は、世界戦に挑戦することとなるが、そのサポートにチャンプの家の四人も加わる。大塚が世界戦に備えたスパーリングの相手は、中西だ。
 その中西へ、広岡はアドバイスし、中西は本来のボクシングを取り戻し、大塚とは違う階級で世界を目指す階段を昇り始める。

 
そうはならなかった。

 今回も予想とは違う方向へ発展するだろう。
 だが、佳菜子が感じた不安、中西の再登場が、いわば読者の予想を混乱させるだけのものとは思えない。