朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第501回2016/8/27

 主人公広岡の気持ちを読めていなかった。
 広岡は、世界チャンピオンよりも翔吾の眼を優先して、眼の状態が悪化すれば、タオルを入れると読んでいた。
 タオルと入れるとすれば、今しかない。しかし、星が言ったにもかかわらず広岡はしなかった。

 広岡がそうしないのは、『春に散る』の登場人物の気持ちを丹念に読んでいればわかったことだ。





 第九ラウンドの戦いは、翔吾と広岡二人だけのトレーニングの場面に似ている。

不意に広岡が右のパンチを放ち、翔吾が左で迎え打つ‥‥。(487回)