朝日新聞連載小説『クラウドガール』金原ひとみ第16回2016/9/17

 母の思い出が鮮明になってきた。

(略)中年女がぬいぐるみと床を共にするなど、おぞましいとしか思えなかった。

(略)毎日酔い潰れるようにして明け方眠りにつく母に憂鬱な思いでいた私は(略)

 これでは、母親が独特な感性の持ち主という域を超えている。理有の母は、病的な面をもっていたのであろう。
 それなら、理有はなぜこの店に入ったのだろう?

不意に、私は何故ベスティのぬいぐるみに吸い寄せられるようにしてこんなところにいるのだろうと不思議になる。

 母のことに今までとは違う見方をするきっかけになるのか?
 母の思い出から抜け出そうとしているサインなのか?