朝日新聞連載小説『クラウドガール』金原ひとみ第22回2016/9/23

 光也への距離を縮める理有の心が瑞々しく描かれ、次回どうなるかとスリリングにさえ感じる。

・気味の悪いぬいぐるみを好きだと言う若者に興味を持つ。
・そのぬいぐるみは母につながり、そこから母の嫌な面を思い出してしまう。
・その思い出のせいもあり、若者との会話を中断したまま彼の店を後にする。
・だが、若者のことが気になり、SNSで呼び出して彼に会おうとする。
・約束の場所に行きながら、会うことをやめようとする。
・彼の方が理有を見つけ、焼肉店で話を始める。
・彼、名前は光也が自分のことを話すうちに、理有の懐疑心はだんだんに消えていく。

「その男の人のことも好きになるかもね」 ※パパの言葉 18回

判断材料が少なすぎる。踵を返そうかと思った瞬間、彼が私に気づいた。 19回

(略)彼を見ながら、どんどん相手への懐疑心が晴れていることに気づく。 21回

 光也を受け入れるかどうかが繊細に描かれている。


「お母さんて、もしかして亡くなってる?」
うん。と答えて、初めて敬語が消えたのに気づいた。無意識に敬語が消えたのは、そうしなければ肯定できないような気がしたのかもしれない。 
22回

 「肯定」は、「亡くなっている?」への返事だ。繊細な描写だ。一語一語に登場人物の心の動きが込められている。


 次回では、母ユリカのことが語られていきそうだ。パパは次のようにも言っていた。

「それにユリカから離れた方がいい」 18回