朝日新聞連載小説『クラウドガール』金原ひとみ第24回2016/9/25

 読み過ごしそうになるが、理有は、光也の問い(23回)には次のように答えているだけだ。

「変わった人でした」

そして、どんな風に変わっていたかを話し始めた。


 相手に対する懐疑心が晴れるということはこういうことなのだ。
 会っていたい、話していたいと思う相手とは、こういう人なのだ。会話が楽しいというのは、聞いてもらえることが前提なのだった。
 理有は、光也には自分の気持ちを淀みなくしゃべることができている。光也には、それを聞いて理解できる経験と能力があるということなのだろう。

 それにしても、母の病的な状態についての理有のとらえ方はしっかりしているし、専門的とさえいえる。自分に関わる病気については、門外漢であっても、しっかりと調べるなら専門的な知識を得られるのはネット社会の特徴であろう。

 母の病的な状態が進行しているときに、父はどうしていたのだろうか?


 もっぱら聞き役になっている光也は、今度は理有自身のことを聞き始めた。

「こういう人間って、どういう人間?」