朝日新聞連載小説『クラウドガール』金原ひとみ第33回2016/10/4

 32回の晴臣の入院中の話はファンタジーだった。今回は、リアルで弱々しい。そして、そんな彼への杏の反応はリアルでシニカルだ。
 ママの思い出は綺麗だ。ところが、ママの現実は、杏にとって辛いものだった。
 杏は、理有のことを「スーパーマンみたいな存在」ととらえている。スーパーマンって、無敵で便利なだけの存在かもしれない。
 大好きだったママ、でも理有がいなければ、どうなっていたか?
 杏を失うことを何よりも恐れている晴臣。でも、また浮気するだろう。その時、杏はどうなるだろう?
 
 じっと膝を抱えている(挿絵)杏だが、+と-の間を激しく振動しているのを感じる。