朝日新聞連載小説『クラウドガール』金原ひとみ第51回2016/10/23

 理有は、誰を愛し、誰に愛されてきたのだろうか。
 父とフランスにいたときの理有は、父に守られていたと感じているようだ。
 両親の離婚後、母と姉妹の暮らしの中で、理有があんなにがんばったのは、誰のためだったのか。母のためか、妹のためか。それとも自分のためか。

杏はいつも自分のことしか考えていない。自分の快楽のことしか考えていない。そしてその自分は常に誰からも愛されていて、皆が自分の快楽のために奉仕するのが当然だと思っている。

 妹に対して、心からこう思っているなら姉妹が一緒にいる理由は、母のあのことしかないと思う。


 光也を振り切るようにして家に戻った理有には、心の内を見せることができるのは父しかいないように見える。

 光也が怒ったり、誤解したりしていないことだけが救いだ。