次の表現がおもしろかった。

「俺は人と共感を糧にするようなコミュニケーションを取らないからね」「どういうこと?」「同じものに喜んだり悲しんだりして仲良くなっていくようなコミュニケーションは取らないってことだよ。(略)」

 
共感を得ることとコミュニケーションを、関連させて考えたことがなかった。意見や主張には、共感や賛同と同様に、反感や反対も大切だということは考えていた。だが、そのこととコミュニケーションを関連付けたことがなかった。
 コミュニケーションとは、互いを理解しあうための手段だととらえていた。だから、多くの人々の共感を得ることが、コミュニケーションの目的だと思っていた。
 それとは異なる見方を示されるとおもしろい。
 共感はされなくとも、正しいことを伝え合うコミュニケーションというのもある。
 そして、受け手を説得するだけでなく、送り手と受け手の互いの相違を際立たせるためのコミュニケーションにも価値がある。
 
 互いに相槌を打つだけで終わるコミュニケーションは心地よいが、印象に残らない場合が多い。