朝日新聞連載小説『クラウドガール』金原ひとみ第63回2016/11/4

 重症の病気だと思った。救急車で、運ばれるだろうと思った。そうはならないようだ。
 広岡さんの対応は落ち着いていて正しいと、思える。姉のことを探るという緊張状態、その中で「夢」という言葉から連想した衝撃が、杏にパニックを引き起こした。心的なパニックによる呼吸障害、過呼吸と呼ばれるもののようだ。
 もしも、これが、心臓発作などの病気だったということになるなら、そうとうの逆転的なストーリー展開だ。
 
 杏の状態についての広岡さんの冷静な観察を考えると、理有に対しても不倫などという関係ではないという気もしてくる。

 今回は待ち遠しかったが、次回もだ。特に、杏が落ち着いたときに、広岡さんは杏と晴臣に何を聞き、何を話すのだろうか、知りたい。