朝日新聞連載小説『クラウドガール』金原ひとみ第77回2016/11/19

 つかみどころのなかった杏のことが、この回の表現ではよく分かるようになった。

秘密を共有しているのも理有ちゃんだけで、ママを失った悲しみも、ママを失った解放感も、解放感への罪悪感も、理有ちゃんも同じ気持ちでいるんだと思うことで受け入れられた。

 こう考えていたのなら、今の杏の奔放な行動も理解できる。


晴臣がいれば、私は理有ちゃんと生きていた時と同等の、いやそれ以上の平穏の中で生きていられる。

 この感覚は、あまりにも危うい。晴臣は、あらゆる面で理有とは違う。

 ‥‥だが、おかしい。杏の心理がきっちりと説明され過ぎている。杏の行動には、理屈で説明できない何かがあったはずだ。