朝日新聞連載小説『クラウドガール』金原ひとみ第82回2016/11/24

 前の浮気のときには、また繰り返すだろうともうしないと言う言葉を信じたい、という葛藤が、杏にあった。そして、晴臣を信じたいと思う自分を嫌悪しながらも、杏は晴臣を許した。
 今は杏に迷いはない。


「別れる」

 それだけ言うと私は口を閉じて目を閉じた。

 これで、杏ははじめて誰にも依存しなくなる。その意味で、ここから彼女の人生がはじまると感じる。

 誰にも頼らない、誰のためでもない生き方をしなければならないのは、理有も同じだと思う。