朝日新聞連載小説『クラウドガール』金原ひとみ第91回2016/12/3

 今までの登場人物の中で、ユリカに一番魅力を感じる。共感は一切できないし、こういう感じの人が実際にいたら決して近づかない。でも、より知りたくなる人だ。

彼女はある一線を誰にも超えさせなかった。ただ小説とのみ、溶け合っていた。

 ここに、ユリカの本質が描かれていると感じる。

 高橋は理有を不快にさせたが、不誠実な人物には描かれていない。ユリカの遺作の一部が「自分自身の遺書だったんじゃないか」という高橋の思いは、当たっているのではないか。