朝日新聞連載小説『クラウドガール』金原ひとみ第96回2016/12/8

 今回で、今までのいくつかのもやもやが消えそうだ。
 杏には、新しい登場人物が現れなければ、話を聞いてもらえる人は彼しかいない。杏が広岡をいい人だと思っていることは分かっていた。
 広岡が、杏に自分と同じものを感じていること(65回)も出てきていた。
 
 93回から繰り返し描かれていた杏の思考については、杏のこの行動の予告の意味もあったのか。そうだとすると、杏は晴臣への当てつけや、うっぷん晴らしのために、広岡と寝たわけではない。
 
 広岡の言葉は、言い訳なのだろうか。

「俺は誘われたんだよ」

言い訳だとすると、広岡の今までの言動と結びつかない。