理有について
 
 日常生活を維持する能力が高い。
 彼女は、飲み終わったマグカップをすぐに洗うとあった。私もやってみたが、意識してやらないとついつい後回しになる。でも、サボらずにやると、それが一番効率的だし、衛生的だ。
 彼女は、節電のために、冷蔵庫の温度を低めに設定するとあった。私は、冷蔵庫の設定など使い始める時以外は忘れてしまっている。でも、製氷機能は使わないので、取扱説明書を読むと製氷機能を使わない設定があった。この設定で、節電が確実にできる。
 人間関係を作ることが苦手だ。
 フランスにいた頃の親しい男の子エリアスは、周囲から変わった子と見られていた。光也は、引きこもりを乗り越えた青年だが今でも対人関係には違和感を感じている。
 彼女は、広くいろいろな人々と関係を作ることができない男性に好かれる。彼女自身も、大学での友人とは親しくなれないようだ。
 今、対人関係を作れないと言われる人は周囲にたくさんいる。私自身も、社交的と思われたことがないし、過去の基準でいえば人づきあいが下手ということになるだろう。

 彼女は、晴臣の自制心のなさと広岡の倫理観のなさを許さなかった。それは、既成の倫理観に支配されているからではないと思う。自分の生活をきちんと維持できる彼女の能力が、晴臣の浮気と広岡と杏の不倫を拒否させたのだと感じた。
 そして、それは今を生きていく上で大切なことだと私は思う。
 彼女を取り巻く環境は、過去も現在も安定したものとはいえない。それなのに、混乱から抜け出せるのは、父の愛を受けた経験が彼女を支えていたのだと思う。しかし、父とのつながり、亡き父とのつながりは限界を迎えた。

 作者は、理有に鋭い状況認識の力を付与している。
 理知で今の状況を分析できる力と、高い生活能力、そして、母と父の存在に惑わされなくなった理有は、将来をつかんでいると感じた。それが、次の表現に示されている。

何が正しく、何が間違っているか話し合い、二人にとっての真実の基準を作り上げていけるのではないだろうか。(最終回)


 私は、ストーリーの上では明らかになっていない理有の行動を、次のように読み取った。
 理有は、母が自殺であることを知っていたが、自殺の幇助はしていない。
 祖父母が来るまでは、母の異変に気付いていなかった。だが、母の死因が自殺であることは知っていた。
 理有は、亡き父と嘘のスカイプで会話をしていた。
 それが、架空のものであることを彼女は意識していた。そして、彼女がそのように亡き父を思い出していることは、母も知っていた。
 これについては、この作品中に私なりの根拠がある。それについては後の記事に書く。