朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一第7回2017/1/8

 役者半二郎の周辺が、徐々に明かされてきた。半二郎を連れて来た愛甲会の辻村の親分が熊井勝利、その熊井と権五郎とは手を組んでいた。熊井が興行師なので、元々役者とは繋がりがあったのであろう。
 花井半二郎は、その辺の事情をよく知っていそうだ。この役者、手踊りや舞台に気を取られている素振りだが、実は権五郎の肚を探っているのではあるまいか。権五郎も、半二郎に役者、映画スターの男の色気だけではない何かを嗅ぎ取っている(6回)ような気がする。