1~14回
 長崎の名門料亭花丸では、立花組の新年会が盛大に開かれた。立花組組長の権五郎は、今や長崎の仁侠世界で実質的に一番の親分である。
 招かれた親分衆の中に、見かけぬ顔があった。それは、愛甲会の若頭が連れて来た歌舞伎役者で映画俳優の二代目花井半二郎であった。役者が顔を出したせいもあり、新年会はますます賑やかなものとなった。
 宴もたけなわ、乱痴気騒ぎとなった舞台に突如幕が引かれた。その幕が開くと、そこには歌舞伎舞踊の名場面が繰り広げられる。そして、遊女墨染の舞がなんとも幻想的で、会場の皆を釘付けにする。その踊り手は、芸妓かと思われたが、なんと権五郎の一人息子だというではないか。

15~25回
 遊女役は権五郎の一人息子、十四歳の喜久雄で、相手役は立花組の若い衆の徳次、十六歳だった。この二人に踊りの稽古をさせ、念入りな舞台を準備したのは、権五郎の女房、喜久雄の母のマツだった。
 徳次は、華僑の父と芸者の間に生まれた子で、母は既に亡くなっており、父は日本にはいない。チンピラとして街で生きていた徳次は立花組の組員に拾われるようにして、組の部屋住みになった。徳次は、年が近いせいもあり、喜久雄とは気が合った。
 喜久雄は、十四ながら、悪さも覚え、情婦といえそうな女(春江)と関係を持っていた。
 
 舞台が大成功の裡に終わり、喜久雄と徳次が料亭の風呂場で化粧を流している時、新年会の座敷が騒がしくなる。その騒ぎは、立花組権五郎に恨みを抱いていた宮地組の殴り込みだった。新年会ですっかりよい気分になっていた権五郎たちは、完全に裏をかかれ、宮地組のドスや日本刀に素手で防戦するしかなかった。
 いったん、二階に逃れた権五郎の前に姿を現したのは、愛甲会の辻村と役者の半二郎だった。愛甲会は、もとより立花組の味方だった。
 素手で立ち向かうしか術のなかった権五郎と立花組の子分たちだが、権五郎の大暴れと、敵の武器を奪ったことで、勢いを取り戻した。敵の武器を奪った立花組の子分たちは、階下に宮地組を追って行く。二階には、権五郎と、辻村と半二郎だけになる。その時、味方と信じて疑わなかった辻村が拳銃を出し、権五郎の腹に二発撃ち込んだ。