朝日新聞夕刊連載小説・津村記久子作・『ディス・イズ・ザ・ディ 最終節に向かう22人』第2回2017/1/13
えりちゃんの復活②

あらすじ
 CA富士の試合を観に行くのを楽しみにしているえりちゃんに比べ、ヨシミは気分が乗らない。ヨシミがオスプレイ嵐山(鶚)の試合を観に行き始めたころは、チームは好調で一部リーグで2位になっていた。ところが、その後は不調で、今は二部リーグに降格していた。オスプレイ嵐山の試合を観に行ってチームが負ける度に、ヨシミは、気晴らしをしなければならなかった。

感想
 熱狂的なサッカーサポーターが取り上げられるのは、そのチームが優勝した場面が多い。でも、応援している人達は、チームが負けている間が肝心なのだろう。応援チームが負ければ、悔しいし、気分も沈む。それをどう挽回して、また応援するか、そこにはどんな要素が働くのだろうか。
 ヨシミは、応援してきたチームが下降している今は、もうこのチームを見限りそうだ。
 
 ヨシミは、仕事の昇進がふいになり、元彼が結婚し、自分自身以外のことを考えたかったころからサッカーを観に行くようになった。一方、えりちゃんは、大学の人間関係に悩み、引きこもりになっていた時に、ヨシミにサッカー観戦に誘われた。このヨシミに誘われたことがきっかけとなって、えりちゃんは、サッカーに興味を持ち、引きこもりからも抜け出せたようだ。
 サッカーを観戦に行き、特定のチームの応援をするのが、落ち込んでいる自分を変えることにつながっている。だが、ヨシミの場合は、気分を変えるためにサッカー観戦をしていたのに、応援チームが不調になると、さらに、別のことを始めている。なんだか、皮肉なことだ。