朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一第19回2017/1/20

 小説の設定では、新年会が昭和三十九年、この年に喜久雄が十四、徳次が十六、とある。(16回)そうすると、喜久雄は、昭和二十五年前後の生まれということになる。
 あくまでも小説の設定だが、私は徳次とほぼ同じ世代になる。
 私の中学生のころ、今と比べると物がなかった。中学校では、給食はないし、真冬でも体育館には暖房がなかった。一学級に四十人以上の生徒が溢れていた。そんな中で、いわゆるワルの連中は、学校の中でワルはワルなりの行動規範があった。番長がいて、集団を取り仕切っていた。もちろん、喧嘩やらタバコやらもやっていたが、同じ学校の真面目な生徒には手を出さないという面もあった。遠い昔なので、思い出が美化されているのかもしれないが。
 このとんでもない二人が、風呂場で湯をかけあっている姿は、時代を考えるとそれほどとんでもないことではないと感じる。
 この二人に、今のところは、見事な歌舞伎舞踊で観客を釘付けする素養は出てきていない。それどころが、二人ともが極道の世界に身を置く素質の方がありそうだ。
 今後のストーリー展開で、喜久雄と徳次は、役者の半二郎と顔を合わせるだろう。半二郎は、喜久雄に役者の才能を見つけるだろうと思っていた。だが、徳次にも眼を付けるかもしれない。それとも、そういうストーリーにはならないのか。