朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一第31回2017/1/31その2

 立花組は続いているし、喜久雄の家も以前のままのようだ。母親も無事だったのだろう。そして、辻村は喜久雄のことを持ち上げている。
 権五郎の一回忌も盛大に行う準備がされているであろう。
 だが、喜久雄はそれに満足などしていない。そうでなければ、亡き父の一回忌の前夜に、春江の母のスナックの 二階でくすぶってなどいないだろう。
 そして、徳次も立花組の変化に気づいていると思う。いかに、鑑別所を脱走してきていても、頼りにできるなら、先ずは組に顔を出すはずだ。立花組には顔を出さず、脱走したその足で、喜久雄の所に来ている。
 組の大人たちが辻村にだまされても、喜久雄と徳次は、だまされていないと思う。そうだとすると、この二人、亡き父、亡き親分の一回忌で何かやるかもしれない。