朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一第41回2017/2/11

 女形の舞にふさわしい体型だということが、描かれていて、気になった。

(略)少年の背中が華奢なせいか(略)

 喜久雄のことを「少年」と書いたのも初めてではないか。
 春江という女がいて、殴り込みの時には自分も駆けつけようとするし、刺青を入れている。一方では、見事に歌舞伎舞踊をこなし、親の敵討ちをする気がなく、華奢な背中をして刺青の痛みに弱音を吐く。喜久雄の二面性が表現されている。

 徳次が脱走してきた夜には、春江は白い背中を見せていた。(26回)二人が刺青を入れているのは、あの夜から時間が経っているのか。