朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一第44回2017/2/15

 先の展開の楽しみとなる伏線が、縦横に張られ続ける。

 殴ったのは、誰か。喜久雄はどうやって反撃するか。
 そして、いくつもの知りたいことが出てくる。
①脱走してきた徳次はどうなったのか。
②喜久雄はまだ中学校を卒業していないようだが、これからどうするのか。
③喜久雄と春江が、このまま長崎に二人でいられるのだろうか。
④役者花井半二郎は、いつ再登場するのだろうか。

 任侠の世界では、葬儀、法要を一般社会よりも重要視すると聞く。まして、亡き権五郎の女房マツは、喜久雄の生みの親の千代子の葬儀を気丈に取り仕切った女だ。そのマツの気持ちがどれほど悔しかったか、想像に余りある。
 マツも喜久雄も、もう辻村の魂胆を見抜いたはずだし、このまま辻村の世話になり続けるとは思えない。