朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一第51回2017/2/22

 旅立ちの長崎駅の風景は悲しげに描かれている。
 長崎を出る喜久雄と見送るマツは、なんとも慌ただしげだ。だが、立花の組員たちは一年ぶりの晴れやかさを感じているようだ。
 短いやり取りしか描かれていないが、門出の喜久雄と見送る母マツの声にも張りがある、と感じる。

 喜久雄とマツの様子と、組員たちの万歳には、大阪へ向かう喜久雄を見送るというにとどまらない事情があったと思う。それは、徐々に明かされるはずだ。