朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一第52回2017/2/23

 マツは、心から喜久雄のことを心配している。しかし、喜久雄の将来を深く考えてのことではなさそうだ。立花の組員は、喜久雄が単身親分の敵を取ろうとしたことを知っているのではないか。しかし、見送りの組員は頼りになりそうもないし、喜久雄が何をするために大阪に行くのかを知りもしないようだ。

A8上段
 
 寝台車では、料金の安い座席だったはずだ。喜久雄自身も、何をするのか、何をさせられるのかをよく知らないのではないか。