朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一第56回2017/2/27

 尾崎の尻馬に乗っただけだが、宮地の大親分、なかなかの大物ぶりだ。たとえ、本心は全く別でも、これだけの演技はたいしたものだと思う。
 それもそのはず、このことが表ざたになれば、どんな厄介が舞い込むか分からない。喜久雄一人が警察に捕まっても、裏の社会で、この敵討ちがどんな評判になるか分かったものではない。

「立花の息子は、すぐに長崎から追い払うこと」

 一方の、尾崎も、この条件は飲まざるをえないものだ。
 さあ、この条件と半二郎の所へ行くことがどう結びつくのか。