朝日新聞夕刊連載小説・津村記久子作・『ディス・イズ・ザ・ディ 最終節に向かう22人』第8回2017/2/24
第2話 若松家ダービー③

あらすじ
 圭太が両親の応援するチームとは違うチームを好きになったことに、母親はがっかりしているように見えた。でも、琵琶湖トルメンタスへの圭太の忠誠心は変わらなかった。
 仁志は結婚前から大津ディアブロの熱烈なファンだった。供子は、仁志と一緒にサッカーを観に行くようになり、結婚後も子どもが生まれてからもディアブロの応援を続けている。供子は、チームの中でフナのことを心配している。フナは、チームのムードメーカーで最近は不振が続いている。供子にとって、二人の子どもはいい子に育っていて、フナが心配の捌け口となってくれていた。
 圭太がディアブロの試合に行かなくなって、家族の間に妙な緊張が生まれた。さらに、供子は、大津ディアブロの試合を観に行くことを家族に強要してきたのかもしれない、と悩むようになった。

感想
 平凡ではあるが、健全な家族だと思う。母の供子も父の仁志も穏やかで、家族のことを大切にしている。
 圭太も、健全な高校生だと思う。家族が応援しているチームと違うチームを好きになった理由もうなずける。サッカーチームの運営や成長については、両親の見方よりも圭太の方がよく考えている面もある。両親への反抗心もあるであろうが、そうだとしてもひねくれたものではない。
 子どもが親から離れ自立していく難しさよりも、親が子どもの自立をどう受け入れていくかが焦点になりそうだ。

 大きな問題はない平穏な現代の家族が描かれている。こういう小説を読むと、今、家族というのは何のために、何を軸として結びついていくのか、考えてしまう。
 私の世代の家族は、よりよい住まいを手に入れ、子どもをよい学校へ入れる、ことが目標になっていた。要するに、家計の発展と子の教育が家族の軸になっていた。そして、変化はしていたが、先代からの土地や墓を継ぐことも行われていた。
 今は、違ってきている。