朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一第59回2017/3/2

 列車ではしゃぐ二人の様子は、やんちゃな中学生の修学旅行のようで、私には懐かしくもある。
 喜久雄は故郷を追われたヤクザの息子、徳次は鑑別所脱走の身だ。やんちゃな十五、十七の少年なのか、それとも手に負えない非行少年なのか、人は見かけでは判断できないと思う。
 喜久雄は、休みがちながら中学校へは通っていたが、卒業式には出れないであろう。徳次は、中学校へも満足に通っていないようだ。
 以前の回でも感じたが、こういう境遇は喜久雄と徳次に責任があるわけではない。